加齢によって表情筋や皮膚が衰えることにより、鼻唇溝が顕著になる等、見た目に変化が起こることはよく知られている。しかし、筋肉や皮膚に起こるこの同じ変化が、体内の見えない部位に生じていることはなかなか認識しづらい。その一つが発声器官である。発声器官の衰えは、声帯という器官の劣えに加えて、呼吸筋や表情筋の衰えがあり、後者は実は顔面のたるみの原因と一致している。そこで、顔のたるみのケアのために表情筋を鍛えることによって、それはすなわち発声器官の若返りになることから、声自体の若返りにつながると考えられる。また逆に、声の若返りのためのヴォイストレーニングによって表情筋が鍛えられることによって、今度は顔面のたるみが改善することが期待できる。本研究では、音声信号を解析することによる音声の可視化を行う技術と、顔を撮影した画像を解析することでたるみを可視化する技術とを併用し、声と見た目の若返りを同時に促進する情報技術の開発を目指す。本発表では特に、音声のうち母音の明瞭度を視覚的にフィードバックすることにより、効果的な発声訓練を実現できることを確認した実験について報告する。