日本語母語話者が英語を話せるようになるためには、単なる英語力の向上を目指すだけでは不十分であり、話し手としてだけでなく聞き手としても会話に参加し、会話を共に発展させていく英語会話のルールを習得する必要がある。本シンポジウムの目的は、1)日本語会話と英語会話における聞き手の言語行動の違いを実際の会話データの分析に基づいて提示し、2)日本語母語話者が英語会話に参加する際に聞き手として必要なストラテジーを教えるための指導方法と教材を提示することである。また、その教材を使ったパイロット授業の成果についても発表する。シンポジウムでは、発表者のこれまでの研究結果に基づき、日本語母語話者が英語会話に積極的に参加するためには、話し手として積極的に話すことも重要であるが、聞き手としても期待されている役割を行い、話し手と一緒に会話を発展させなければならないことを指摘する。従って、英語会話を指導する際には「話し手は情報の開示を日本語の会話より、より具体的に深く行い、情報の受け手である聞き手も積極的に話題の発展に関与する会話を指導すべきである。提示する教材は重点を置くのは「①話し手の具体的な情報開示、②聞き手の非語彙的あいづちと語彙的あいづちの打ち方、③内容を確認する質問とより詳しい情報を引き出すための質問、④情報受け手側である聞き手による関連発話」であり、同時に指導法も提示する。また、「⑤間をあけない話者交代の方法や、相手のターンの終わりを予測し重複させてターンを開始する」練習も含む。この教材や指導法、パイロット授業の成果を示し、「英語会話では情報受け手側も積極的に関与して会話を進行させることが期待されていることを意識させながらの訓練が必要」であること示し、英語会話で積極的に話すためのストラテジーを日本語母語話者に段階を追って明示的に教えれば英語力向上につながることを明らかにする。