登山での転倒・滑落は下山時に発生することが多いが,近年,疲労や病気を原因とする高齢者の山岳遭難が増加傾向を示しており,心身の疲労具合に応じた安全な登山が求められている.本研究では実際の登山道において,眼鏡型および腕時計型ウェアラブル端末を用いてストックあり・なしの歩行状態を計測・分析した.その結果,ストックの使用が,①下山時の着地強度の軽減,②視線移動の減少に伴う足元への注視,③荷重分散と筋力の消耗低減に伴う歩行バランスの安定化に寄与できる可能性があり,また被験者の登山経験の差異によって足の踏み込み方の違いがある可能性が示唆された.ストックの適切な使用を登山者に指南できれば,遭難事故防止の一助になることが期待される.