「絵本」は、「構造」と「内容(コンテンツ)」から構成されている。「構造」は「伝達手段」「媒体」と同義となるので、それは様々なコンテンツを運ぶ存在としての「メディア」と言い換えることができると考える。「絵本メディア」と述べた場合、それは絵本としての構造の特性を指す。
1960年代から「メディア論」を展開したマーシャル・マクルーハンは「メディアはメッセージである」とし、情報におけるメディアとコンテンツが相互に影響を与え合う密接な関係性を持ち、何らかの情報について考えるときそのメディアが持つ特性の重大さを指摘した。マクルーハンはその論考の中で繰り返し「メディア」と「人間の身体の拡張」と「技術」を同義と位置づけ、テレビが新しい技術だった時代に新しい電子テクノロジーが社会にもたらす変化を予見した。その指摘の通り20世紀は「映像の世紀」と呼ばれるようになり、メディアアーティスト落合陽一は、21世紀を迎えた現在は情報技術がディスプレイの内側ではなく現実を変える時代「魔法の世紀」であると発言している。こういったメディアの変遷の歴史の中に「絵本メディア」を置いた場合、そこにどのような特質が認められるかを考察する。
「絵本とは」といった「定義」に触れるとき、そこに使用される用語、また「ハイテク系絵本」「コンテンツ絵本」といった呼称の正当性などを検証しながら、「絵本メディア」に内包された入れ子構造の「メディア」と「コンテンツ」の関係性を整理していき、「マルチメディア」・「メディアミックス」といった昨今の横断的な括り方の中においても、「絵本メディア」の特質が明確にできることを提示する。