モンゴル国における近現代の定住に関する研究の一環として、日本モンゴル学会で発表を行った。本発表ではまず、ゲル地区に関する研究成果を総括し、遊牧用ゲルと固定住居バイシンを併用するモンゴル独自の定住の実態、近年における定住文化の芽生えを示す諸事象について紹介した。その上で、2019年に実施した集合住宅内部の住まいに関する実態調査結果、新公文書館に所蔵された当時の実施設計図から間取りと設計意図を読み取る分析の一端について述べた。さらに、当時の設計図面と同年代に竣工した集合住宅の現況図面を比較しながら、モンゴルの人々が、扉を取り払う、壁を撤去するなど間取りを変更し、大きな部屋とダイニングキッチンの空間的関係を強化し利用している状況、靴脱ぎの場所を明確にして土足を脱ぎ室内を利用している状況、廊下の一部を複数の住戸世帯同士で合意の上、自ら風除室を設けて冷気の侵入を防いでいる状況など、その実態の一端を紹介した。