本研究ではキラリティ導入により自発分極が発現するSmC相を呈する液晶性化合物を取り上げ(以下では「液晶性化合物」を単に「液晶」と呼ぶ)、¹³C核磁気共鳴法(¹³C-NMR)を用いて液晶分子を構成する各炭素原子の運動性を観測することで、キラリティと分子運動の関係を研究した。不斉炭素を有するキラル液晶とその同族体のアキラル液晶の両方について、共鳴ピークのプロファイル解析ならびにスピン-格子緩和時間(T1)測定を行った。骨格部やアルキル鎖炭素の多くにおいてキラリティ導入によるダイナミクスへの影響は確認されなかったが、キラリティを担うC23と*C23の間には有意な運動性の差が認められた。