短編文化記録映画「紅」は、化粧紅の製法を題材に制作した映像作品1) である。作品中で紹介する化粧紅とは純度の高いベニバナの紅色色素そのものであり、ベニバナ花弁から伝統的製法で精製されたもの 2) である。繊維等に染色されたベニバナ色素は緑から青色にかけての可視光を吸収し赤色蛍光を発することが知られており 3)、また乾いた状態の新鮮な化粧紅は、明瞭な緑色金属光沢を呈する 4)。 映像作品では、これらの諸性質を持つ色材の特徴を伝えるために、色彩の確かさと優れた質感描写力を期待して映画用 35mmカラーネガフィルムを使用して記録した。しかし、その映像は期待に反し、緑色の光沢を有する紅猪口が、金色に写ってしまった。
この発表は、乾燥した化粧紅の色彩をヒトの眼で観察される通りに写し取るために行った、フィルム撮影時のフィルターワークによる赤末域の感度コントロールの試みである。