本稿の目的は,数学教師を志す大学生の自主的なゼミナール活動(以下,自主ゼミ)の学習環境での極限概念の形成がどのようになされるのかを検討することである。そこで,自主ゼミに参加したある1名の学生のインタビューから,複線径路等至性モデル(TEM)に基づいて分析した。結果, 学生の主体的な学習環境に支えられた自主ゼミによって,学習者の深い極限概念の形成を促すことが示唆された。自主ゼミには,Tall(2016)の指摘する「実際数学」から「形式数学」に至る学習者の極限概念に関する数学的思考発達の過程があると考えられた