中国大陸古代の装飾的な書体である「鳥蟲書(ちょうちゅうしょ)」について,その機能が青銅器文様の機能と近しく,読みにくく作られていることが,文字を「見る」伝達に貢献していることを示した。鳥蟲書以前の文字は,文字の造形によって言葉の意味に象徴性や心理的効果を加えることがなく,鳥蟲書は漢字歴史上はじめての「タイポグラフィの造形的効果」を意図した書体だと言える。そのために「読みにくい」ことが造形的効果に寄与していることを示した。